周年ブランディングとは?100年企業も取り組む理由や重要性をご紹介

2025年に100周年を迎える上場企業は味の素、アース製薬、三菱鉛筆など少なくありません。これらの企業は、単に過去の成功に依存することなく、常に時代に適応し、革新を続けてきた結果として、100周年を達成したと言えるでしょう。しかし、急速に変化する経済環境と市場の中で、次の100年に向けて企業が存続し続けるためには、経営者による戦略的な判断と、周年を活用した「周年ブランディング」が非常に重要な役割を果たします。今回は、100周年を迎える企業の特徴と、それに伴う経営戦略の中で、特に「周年ブランディング」の重要性について掘り下げて考察します。
100年企業の特徴と背景
日本には多くの企業が100年を超えて存続しており、その多くは伝統的な業種である一方、現代のグローバル競争においても競争力を維持しています。これらの企業の成功要因をいくつか挙げると次のようになります。
1.  品質と信頼の積み重ね
100年企業はその品質を維持し続けることで顧客の信頼を得てきました。品質こそがブランドの核であり、顧客にとって「変わらない価値」を提供することが、長期的な存続につながっています。
2. 経営の柔軟性とイノベーション
過去の成功体験に固執することなく、経営陣は時代の変化に柔軟に対応し、新たなビジネスモデルや技術革新を取り入れ続けています。特に、デジタル化やグローバル化といった大きな変革に適応する力を発揮しています。
3. 文化と伝統の継承
長寿企業は、単に製品やサービスの提供にとどまらず、その企業独自の文化や理念を大切にし、組織内部で代々受け継いでいます。この企業文化こそが、社員や顧客との深い絆を生んでいます。
4. 地域社会とのつながり
地域密着型の企業が多い日本では、企業が地域経済や社会貢献活動に積極的に関与することが、企業の長期的な存続に大きく寄与しています。そうした企業の経営者の多くは、地域とのつながりを重視しています。
経営者がすべきこと ― 100年企業を次の100年につなげるために
100年企業をさらに100年先につなげるためには、経営者の果たすべき役割が極めて重要です。その中でも、特に重要なのは「伝統を守りつつも革新を推進する姿勢」と、「強力なブランド戦略の構築」です。以下に、経営者が取るべき戦略を5つ挙げます。
1. 企業のビジョンと価値観の再定義
経営者は、企業の創業理念やビジョンを再定義し、社員と顧客に共有することが大切です。特に、100周年という節目のタイミングでは、企業の「これから」の方向性を示すことが重要です。企業の価値観や文化を再確認し、それに基づく行動指針を打ち出すことで、全社員が共感し、企業として一丸となって次のステップに進むことができます。
2. イノベーションとデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進
100年企業は伝統を守りながらも、時代に応じたイノベーションを進めてきました。例えば、製造業であれば生産ラインの自動化やAIの活用、サービス業であればデジタル化やオンライン化など、テクノロジーの活用は今後の成長に欠かせません。経営者はこれらの新しい技術を積極的に取り入れ、企業の競争力を強化する必要があります。
3. グローバル展開と多様化
国内市場の縮小に対して、100年企業は積極的に海外市場に進出し、グローバルな視点での成長を目指しています。経営者は新興市場や発展途上国をターゲットにした戦略を策定し、地域ごとのニーズに合わせた製品・サービスを提供することで、企業の規模を拡大し、安定した収益源を確保することが求められます。
4. 人材育成と次世代リーダーの発掘
企業が長期間存続するためには、次世代を担う人材の育成が不可欠です。経営者は、社員のキャリアパスを明確にし、成長の機会を提供することで、優れた人材を引きつけ、長期的に企業に貢献できる人材を育成しなければなりません。
5. 社会的責任(CSR)とESGの推進
現代の企業は、環境や社会への責任を果たすことが求められています。企業の社会的責任(CSR)や環境・社会・ガバナンス(ESG)への取り組みが、ブランド価値を高める要因となるため、経営者は積極的にこれらの取り組みを行い、社会全体に対してポジティブな影響を与えるよう努めるべきです。
周年ブランディングとは
「周年ブランディング」とは、創業10周年、50周年、100周年といった企業の節目を単なる過去の記念日として祝うだけでなく、未来の成長に向けた戦略的なブランディング施策として活用することです。これは、過去の成功と現在の存在意義を再確認し、「次の〇〇年」に向けた新たなビジョンと決意を社内外に力強く発信する絶好の機会です。周年ブランディングの主なポイントには以下のようなものがあります。
歴史の棚卸しと再解釈
これまでの歩みの中で培ってきた独自の価値観や精神を掘り起こし、現代の文脈に合わせてブランドの「物語」として再構築します。
メッセージの統一
過去への感謝と未来への期待を込めた統一的なメッセージを策定し、すべてのコミュニケーションで一貫して発信します。
ステークホルダーとの関係深化
顧客、社員、取引先など、企業を支えてくれた全ての人々に対し、感謝を伝え、エモーショナルな絆を強化します。 このように周年ブランディングは、一時的なプロモーションやイベントではなく、ブランド価値を再定義し、企業の持続的な成長を加速させるための戦略的投資となるものです。
周年ブランディングの重要性
100周年を迎える企業にとって、周年イベントや周年活動は単なる「お祝い行事」ではありません。周年を機に、企業はそのブランドを再構築し、次の100年に向けての新たなスタートを切ることができます。このため、周年ブランディングは非常に重要です。
■企業の歴史と価値を再認識させる
周年イベントは、企業がどれだけの年月をかけて信頼を築いてきたかを示す絶好の機会です。このタイミングで、創業から現在までの歴史や価値を振り返り、消費者や社員に対して再度その意義を訴えることができます。これにより、顧客や取引先との信頼関係をさらに強化することができます。
■ブランドメッセージの強化
周年を迎える企業は、その節目を利用して、企業のブランドメッセージを再定義することができます。新しい世代の消費者に対しても強い印象を与えるためには、過去の実績だけでなく、これからの企業の方向性を明確に打ち出す必要があります。例えば、環境問題への対応や社会貢献活動への注力をブランドの一部として打ち出すことで、企業の現代的な価値を伝えることができます。
■顧客とのエモーショナルなつながりを強化
周年ブランディングでは、顧客とエモーショナルなつながりを作り出すことが重要です。100周年という節目においては、顧客に対して感謝の意を表す活動が重要です。例えば、特別なキャンペーンやプロモーション、感謝祭の開催などを通じて、顧客との絆を深めることができます。
■メディア戦略とPR活動
周年という節目は、メディアや広報活動においても大きな注目を集めます。このタイミングでメディアに積極的にアプローチし、企業のストーリーやビジョンを広めることで、ブランド認知度を向上させることができます。また、これを機に新しい製品やサービスを発表することも効果的です。
経営者が実践すべき周年ブランディング戦略
周年ブランディングを効果的に行うためには、経営者は以下のような戦略を取ることが重要です。
■ブランドの「物語」を再構築
企業の100年の歩みを振り返り、どのように成長し、社会に貢献してきたのかを物語として再構築することが大切です。このストーリーを顧客や社員と共有することで、ブランドへの愛着や信頼をさらに深めることができます。
■「次の100年」のビジョンを示す
周年を機に、「これから」のビジョンを示すことが必要です。100周年の活動が過去を祝うだけでなく、未来に向けた一歩を踏み出す契機となるように、新しい製品やサービスの発表、社会的課題への取り組みを積極的に行うべきです。
■限定商品や特別イベントの実施
周年に合わせて、限定商品や特別イベントを開催することは、顧客に特別感を与える良い方法です。こうした活動はブランドへの愛着を深めるとともに、メディアにも取り上げられる可能性が高く、広範囲にブランド認知を広げることができます。
■周年活動を社員と共創し一体感を生み出す
周年を一部の幹部や社員だけで推進するのではなく、全社を巻き込んで活動することで社員にも深い影響を与えます。社員一人一人が自らの手で未来について考える機会を作ることが非常に重要です。次の100年に向け社員の士気を高め、企業文化の強化にもつなげることができます。
周年ブランディングのロードマップ
周年ブランディングを単なる「お祭り」で終わらせず、ブランド価値向上に結びつけるためには、入念な準備・計画と実行が必要です。成功に導くための代表的なロードマップをご紹介します。
準備フェーズ:周年の2~3年前
戦略策定と体制構築。周年事業のKGI/KPI設定、ブランド価値の再定義、プロジェクトチームの発足(経営層主導の横断チーム)、外部コンサルタント選定、初期予算策定。
計画・開発フェーズ:周年の1年前
コンテンツ・施策の具体化。「次のビジョン」発表、タグライン・ロゴの開発、イベント企画、記念誌制作、Webサイトのリニューアル、サプライヤーとの連携、社内への事前周知と意識統一。
実行・浸透フェーズ:周年~1年後
集中的なコミュニケーション。イベント・PR活動の展開、社員向け施策の実行、採用市場への訴求、顧客への限定オファー実施。活動後のブランド定着に向けた活動の継続。
成功させる鍵となるのは、以下の3点です。
・早期着手
周年事業の成功は、十分な準備期間を設ける必要があります。特に歴史の掘り起こしや、納得のいくディスカッションには多くの時間がかかります。
・経営層のコミットメント
経営トップが「未来に向けた投資」として主導することで、社内の協力と予算が確保されます。
・「未来」の強調
過去の栄光を語るだけでなく、「次の〇〇年に何を目指すのか」という未来へのビジョンを示すことに焦点を当てることが、強いメッセージとなります。
周年ブランディングで強化すべき3つのステークホルダー
周年ブランディングでは企業を取り巻く主要なステークホルダーとの関係性を、戦略的に強化する機会となります。特に強化すべき3つの層と、その代表的な施策を解説します。
インナーブランディング(社員)
社員はブランドの最大の体現者です。周年を機に、企業が歩んできた道のりと社員自身がその歴史の一部であることの意義を伝えることで、帰属意識と誇り(エンゲージメント)を飛躍的に高めます。
施策例:社員参加型の記念誌制作、社内向け感謝イベント、理念を再解釈するワークショップの実施。
アウターブランディング(顧客・パートナー)
顧客や取引先は、企業の存続を支えてきた重要な存在です。感謝を伝えることはもちろん、企業が今後も長く存続し、彼らに価値を提供し続けるという安心感と期待感を醸成します。
施策例:顧客向け限定商品・サービスの提供、パートナー企業との合同イベント、トップからの感謝メッセージの発信。
採用ブランディング(求職者)
創業年数が長いことは、安定性と信頼性の証明です。周年ブランディングで「次のビジョン」を明確に示すことで、企業理念に共感する優秀な人材に対し、長期的なキャリアパスと社会貢献性を訴求できます。
施策例:記念サイトや動画での歴史とビジョンの公開、採用メッセージへの周年の要素の組み込み。
結論
企業が100年続くためには、単に過去の成功に頼るだけでなく、未来に向けた戦略が不可欠です。経営者は、伝統と革新を両立させ、企業を次の100年につなげるための確固たるビジョンを持ち、その実現に向けて取り組むべきです。その中で、周年ブランディングは企業の歴史を祝うだけでなく、新たな成長の可能性を示すための重要な手段であり、企業の長期的な存続にとって非常に重要な役割を果たします。
ジェイスリーはこれまで多くの周年企業をご支援してまいりました。
周年を機に自社の価値を再確認し、次の100年に向けたブランディングに取り組んでみませんか。
1974年島根県生まれ。インフォメーションデザインを主体にキャリアをスタートし、インターネット創成期における大手企業サイトやキャンペーンサイトのプロデュースを数多く手掛ける。現在はBtoB企業やスタートアップ、自治体などの課題をブランディングとDXの知見を活かしコンサルタントとして活動している。2020年 代表取締役社長に就任。
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