声を聞く「リアルで正直な想い」こそが企業が持つ本質だった

数値化されない「事実」をどう掘り起こすのか?をテーマに、フィールドワークに絞った事例を紹介しているシリーズ。
第1回/見る、感じる、体験する
第2回/聞く、聞く、聞く、とにかく聞く
第3回/一緒に考える
今回は「第2回/聞く、聞く、聞く、とにかく聞く」の事例をご紹介します。
その虎を追い出してください、私が捕まえてみせましょう!
前回記事では、「価値探し」をするためにまずは自分たちがファンになることを実践している事例のご紹介をしました。
そして、今回ご紹介するのは「徹底的に声を聞く」にまつわる事例です。
価値探しのプロであると自負している私たちでも、じっと目を見るだけで相手の頭の中が見えるような超能力は持ち合わせていませんので、一休さんよろしくやはりその頭の中は外に出していただかないと捕まえることができません。
当事者であれば「なんとなくこんな感じ」と感覚的に理解できていることは、当たり前ですが当事者でない人には正しく伝わりませんし、時には誤解されている場合もあります。
「私は背中で語るのです、私の仕事を見てくれればわかります」…残念ながらそれでは伝わらないのです。
「企業理念は社長にしか語れない」って本当だった
そこで私たちは徹底的に「声」を聞かせていただくことに重点を置きます。わからないことを質問攻めにするというよりは、どちらかというと頭の中を見せていただくといった感覚です。そしてこれが、予想もしなかった展開を見せた事例をご紹介します。
きっかけはコーポレートサイトのリニューアルのご相談があり、企業サイトに必須コンテンツである「トップメッセージ」制作のため、社長へのインタビューをさせていただいていた時のことです。
なんとこのインタビュー、終わってみると約2.5時間×3〜4回という長期にわたるものになりました。というのも、お話いただいた内容を私たちが文字に起こして言語化、それを読んでいただき違和感を感じる箇所にフィードバックをいただいて書き直す、このブラッシュアップが何度も何度も重なっていったからです。
ところがこれらのプロセスに粘り強くお付き合いいただく中で、何度も出てくる言葉やこだわりが強い言い回しがあることがわかってきました。私たちも初めは社長からのメッセージのつもりでお聞きしていましたが、言葉にフォーカスすることで次第に企業という存在が見えてきたのです。
これはもう社長の声ではなく企業の声だ。
そう確信した瞬間でした。そこで一気に方向転換、新しい企業理念(Mission、Vision、Value)に仕上げることを提案し、最終的には企業価値を見つけ出しカタチにすることが実現。個人的にも、どこかで読んだことがある「企業理念は社長にしか語れない」という言葉が腹落ちした忘れられないプロジェクトになりました。
▼コーポレートサイト(株式会社データサービス)事例紹介はこちら
綺麗事だけでは語れない、現場のリアルこそ本質だった
もう一つ、次は企業価値を体現している社員のみなさまの「声」のお話。
私たちはこれまで、実際の仕事現場に入らせていただき、そこで働く社員のみなさまのお話をたくさん聞いてきました。
食品原材料を製造する製造工場では工場長が大きな機械を前にお話しをしてくださいましたが、目の前にある機械についての説明はあまりなく、自分がどんな思いでこの機械を回しているのか、自分の仕事がこの後どういった形で世の中に貢献していくのか?を熱心に話してくださいました。社外の私たちにこんな話ができるなんて、なかなか無いことだと感動しました。
船の底にある機関室、轟音を立てながら回る大きなスクリューを見せてくださった機関士の方は、船が前に進む仕組みや設備の説明、安全航行のための最新システムについてなどをわかりやすく話してくださいました。最後に「最近の船はコンピューター制御されているからねぇ…」と少し寂しそうに話されたのが印象的でしたが、だからこそ自分たちには大切な仕事がある、という気概を感じることができました。
飛行機の羽の先にある穴を下から指差し「なんのための穴か知ってますか?」と、知ってるはずない私たちに半ばドヤ顔で嬉しそうに答えを教えてくださった整備士の方、ただただ「飛行機が好きです」を体現されている方でした。こんなに愛されながら自分のことを褒めてもらっている飛行機の方が、むしろ誇らしげな顔をしているように見えてきたから不思議です。
▼さんふらわあで働く人たち Vol.3 機関室編 取材レポートはこちら
私たちは、このようなプロセスを通じて、それぞれの仕事に対するプライドや、その奥底に根付いている愛着や思いを表面化させてカタチにしていきます。
現場で語られる正直でリアルな声こそが、その企業が持つ本質だと確信しているからです。
シリーズ最終回は、「第3回/一緒に考える」のご紹介をします。ご期待ください!
1998年よりカタログやSPツール制作中心の制作会社にてデザイナーとしてのキャリアをスタート、2000年にジェイスリー入社後本格的にエディトリアルデザインの業務にどっぷり浸かり、多数の月刊誌、旅行系雑誌やムックのアートディレクターを歴任。現在の活動は、WEBメディアの企画や制作ディレクション、インナーブランディングのコンサルなど、クライアントの課題解決のための改善提案立案およびコンサルテーション業務まで多岐にわたる。座右の銘は「自分の感受性くらい、自分で守ればかものよ」
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