企業ブランディングとは?目的から実施のポイントまでを徹底解説

企業ブランディングとは|目的から実施のポイントまでを徹底解説

<初回公開:2024年10月29日/更新日:2025年12月2日>
企業の成長や時代の変化によって、組織力や採用力の強化、企業イメージ刷新の必要性など、さまざまな課題が発生します。それらの課題を解決するための手段として効果的な施策は、「企業ブランディング」です。このページでは企業ブランディングについて、役割の整理、施策実施のポイント、期待できる効果について、詳しく解説いたします。

企業ブランディングとは

企業ブランディングとは、企業が持つ理念、価値観、個性、提供する約束を明確にし、全てのステークホルダー(顧客、社員、株主、社会など)に向けて一貫性をもって伝達・浸透させるための活動のことです。これは、単にロゴやデザインといった「見た目」を整えることではありません。企業の「存在意義(パーパス)」を深く掘り下げ、事業活動を通じてその価値を体現し、市場における独自のポジションと信頼を確立することを目的としています。

「ブランド」と「ブランディング」はどう違うのか
「ブランド」は顧客や市場の心の中に形成される“企業のイメージや信頼、感情的な価値”そのものであるのに対し、「ブランディング」はそのブランドを意図的・戦略的に構築し、維持・向上させるための継続して行う活動を指します。

企業ブランディングの価値
企業ブランディングを実施するこどで、以下の観点で企業価値を高めることができます。
・差別化: 競合との価格競争から脱却し、「その企業でなければならない理由」を顧客に提供して、優先的に選んでもらえるようになります。
・信頼獲得: 一貫したメッセージの発信と行動(企業および従業員)によって、市場や社会からの揺るぎない信頼を得られます。
・組織力強化: 従業員が自社の存在意義に誇りを持ち、高いエンゲージメントを持って働く組織文化を醸成します。

戦略的な企業ブランディングが必要な理由

「企業ブランディング」とは、企業の存在意義、提供価値、そして約束を社内外に明確に伝え、一貫したイメージを構築することを目的としています。そのため単なる見た目のデザインを綺麗にしたり、広告活動を行うだけで構築されるものではなく、戦略的に取り組むことで成し遂げられるものです。

コモディティ化時代における競争優位性の確立
製品やサービスが高度化・均質化し、機能やスペックだけでは差別化が困難な「コモディティ化」が進む現代において、企業ブランディングは決定的な競争優位性となります。「この企業ならではの価値観」「この企業だからこそ」という情緒的な付加価値を築くことで、競合他社には真似できない独自のポジションを確立します。

価格競争から脱却し、高収益体質を実現
強いブランドは、顧客に「信頼」と「安心感」を与え、その価値に対して対価を支払うことを厭わない顧客層(ロイヤルカスタマー)を育成します。これにより、企業は不必要な価格競争から脱却し高収益体質へと移行することが可能になります。

事業ポートフォリオの整理と選択と集中への活用
企業ブランディングのプロセスで、自社の核となる強みや提供すべき価値を再定義することができます。この再定義を通じて、将来性のある事業への経営資源の選択と集中の材料となり、事業ポートフォリオの最適化を進める指針の一つとなるのです。

企業ブランディングを構成する主な要素と活動

企業ブランディングは、単一の活動ではなく、複数の要素が連携して初めて機能するものです。主な構成要素と取り組みをご紹介します。

ブランド・アイデンティティ(BI)
ブランド・アイデンティティは(ブランドの核となる要素を体系化したものです。以下の3つに分けられます。
・MI (Mind Identity/マインド・アイデンティティ): 企業理念、ビジョンなど、企業の精神を体現するもの。
・VI (Visual Identity/ヴィジュアル・アイデンティティ): ロゴ、カラー、デザインなど視覚的な表現。
・CI (Corporate Identity/コーポレート・アイデンティティ): 上記MIとVI、そして行動規範など、企業活動全体の一貫性を確立するもの。

インナーブランディング(組織文化と従業員エンゲージメント)
企業の理念や価値観を社内へ浸透させ、社員の意識や行動を変革する活動です。社員一人ひとりがブランドを体現することで、顧客にブランドが浸透し、企業価値が高まります。

アウターブランディング(顧客・市場への訴求と信頼構築)
顧客や市場に対し、企業の製品・サービスを通じて一貫したメッセージと体験を提供し、ブランドに対する認知度、好意度、信頼を築く活動です。広告、PR、Webサイト、店舗デザインなど、すべての顧客接点(タッチポイント)で実現する必要があります。

企業ブランディングがもたらす効果

ブランディングは「効果が見えにくい」と言われがちですが、戦略的な企業ブランディングは、経営指標に連動したリターンを生み出すことが可能です。ブランディングを「未来への投資」として評価するために、定量的・定性の両面から効果を測定する必要があります。

定量的効果の測定方法
ブランディング活動が具体的な数値として経営に与えるインパクトを評価する代表的な方法です。
・売上・利益率: ブランドスイッチ(乗り換え)の減少、プレミアム価格の受容性向上。
・採用効率: 企業認知度向上による応募者数の増加や、採用コストの削減。
・組織効率: 従業員エンゲージメント向上による離職率の低下。

定性的効果の評価方法(ブランド好意度、顧客ロイヤルティ)
数値化が難しいですが、ブランドの価値を決定づける顧客や社員の意識の変化を測定することができます。
・ブランドイメージ調査: 認知度、好意度、想起率、特定のブランド連想(信頼性、革新性など)の経年変化の測定。
・顧客ロイヤルティ: NPS(Net Promoter Score)などの指標を用い、顧客がブランドをどれだけ他者に推奨したいかを測定します。

効果測定結果を次の戦略に活かす
測定結果は、単なるレポートで終わらせず、次のアクションプランに活かすことが重要です。「どの層にブランドが浸透していないのか」「ブランドの約束と実際の体験にギャップはないか」を特定し、製品開発、サービス改善、コミュニケーション戦略の軌道修正を行うことで、PDCAサイクルを回し、ブランディングの効果最大化を図ることが重要です。

企業ブランディングの戦略・計画の7つのポイント

企業ブランディングを行う際に意識したい7つのポイントをご紹介いたします。

1. 自社の特徴や強みを確認する

自社の資産を棚卸しして特徴や強みを確認することは、企業ブランドの基盤を作るための第一歩です。創業からこれまでにどのような事業や活動を行い、何を得意としてきたのかを洗い出すことで、自社が提供できる価値や得意とする領域が明らかになります。
これにより、ブランドの本質が明確になり、今後のブランディング活動全体における基礎が確立されます。弊社がブランディングを支援する際には必ずと言っていいほど実施する重要なステップです。

2. 自社のポジショニングを考える(競合と差別化する)

自社を市場でどのように位置づけるか(ポジショニング)を検討することは、競合と異なる独自の立ち位置を明確にするために欠かせません。特に、顧客や消費者にどのように認識してもらいたいかを踏まえて、価値提供の形や顧客体験の特徴を検討していきます。
ここで気をつけなければらないのは、自社らしさを失わないことです。これまで、企業ブランディングや商品・サービスブランディングを支援させていただく際に、競合との差別化を意識するあまり、自社の特徴や強みが抜け落ちたままブランド構築を進めようとする企業を少なからず目にしてきました。
あくまで自社の特徴や強みを活かしながらのポジショニングでなければ、同じポジションに再度競合が出現したときに自社が選ばれる理由が希薄になりかねません。

3. ミッションやビジョンを明確にする

企業の存在意義や目指すべき未来を表すミッション、ビジョンやパーパスは、ブランドの方向性を社内外に示す指針です。これらを明確にすることで企業活動に軸ができ、組織全体が共通の目的に向けて一丸となって取り組むことが可能になります。
社外に対しては、社会へのポジティブな影響を想起させる要因となり、自社が社会に不可欠な存在であることを印象付ける結果につながります。

4. コミュニケーションに一貫性を持たせる

理念からメッセージやデザイン、ビジュアルイメージなどに一貫性を持たせることは、ブランドの認知度と信頼性を高めるために欠かせない要素です。ブランドを構成するマーケティング活動の一つひとつまで統一されていることで、どのタッチポイントにおいても同じブランド体験を提供でき、市場に企業イメージを浸透させやすくなります。
一貫性のあるブランディングは、顧客の記憶に残り、ブランドの認知度を高める効果があります。

5. 社外だけでなく社内にも浸透させる

企業ブランドは社外に発信するだけでなく、社内にもしっかりと浸透させることで、より強固なものになります。社員一人ひとりが企業ブランドの価値観を理解し、それにふさわしい行動を実現していくことでブランドの信頼性が増し、より強力なブランド形成が可能になります。
ブランディング=社外に向けての取り組みと認識されている方は少なくありません。弊社では社外と社内の両面でブランドの発信を計画・実施することで、効率的なブランドイメージの構築を進めています。

6. 長期的視点でブランディングに取り組む

ブランドを構成するマーケティング活動の一つひとつは短期間で効果や結果を得られる一方で、ブランディング全体はすぐに効果を得ることが難しく、数年先を見据えて行う投資的な取り組みです。
企業のミッションやビジョンをベースに中長期的な計画のもと活動することで、短期的なブームやトレンドに左右されることなく、強固な企業ブランドを構築することにつながります。

7. 常に調整しながら継続的に活動し続ける

「中長期的な計画のもと活動する」という前項とは相反するように感じるかもしれませんが、時代や環境の変化に応じて柔軟に調整を行うことは、ブランディングにおいても重要なポイントです。ここで意識しなければならないのが、前述の通り自社の特徴・強みに軸足を置き、ミッションやビジョンなど理念に沿った形で調整を行うことにあります。
経営層の交代や中長期経営計画の更新、周年のタイミングを機会に企業ブランドを見直すことで、企業ブランドが時代遅れにならず、顧客や市場の期待に応え続けることが可能になります。

企業ブランディングの成功事例

ジェイスリーが伴走支援を行った企業ブランディングの成功事例をご紹介いたします。

VIのアップデート(グローウィン・パートナーズ株式会社)

創業当初の固い企業イメージと、クライアントに評価される「人間力」とのギャップが課題でした。そこで、創立20周年を見据え、ワークショップやディスカッションを通じてブランド設計を行い、等身大の「親しみやすさ」を表現したロゴマークと、使いやすい営業ツールを制作しました。その結果、社内の意識が「変わらなくていいものはない」という方向へ変化し、提案の幅が広がり、新しい施策への挑戦を促す企業文化が醸成されました。
>詳細はこちら|企業ブランディング成功事例(グローウィン・パートナーズ株式会社)

社名変更に伴うリブランディング(UPWARD株式会社)

社名変更と、外回り営業(フィールドセールス)が持つ「泥臭い」イメージを払拭したいという課題がありました。ジェイスリーは、長年の付き合いの中で企業を熟知した上で、イメージボードや対話を通じたブランド戦略設計、キービジュアルや「Go Smarter」というコピーを開発しました。これにより、未来志向のスタイリッシュなブランディングが実現し、採用や社員への想いの伝達、エンドユーザーの購買意欲の向上に貢献しました。
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創業70周年に向けた理念体系の再構築(松田電気工業株式会社)

創業70周年に向け、中期経営計画の主軸となる既存の経営理念が複雑で社員に浸透していないという課題がありました。全社員アンケートや役員へのヒアリング、理念キャンプといった議論を重ねて、重要キーワードを抽出・整理しました。その結果、「経営理念」「スローガン」「ミッション」「ビジョン」「バリュー」の5つからなる、格式を保ちつつ若い世代にも伝わりやすいシンプルで明確な理念体系の再構築が実現しました。
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将来的な経営戦略を見据えたブランディング(MOBILIX HOLDINGS株式会社)

従来のカーディーラー主体から脱却し「Total Mobility Company」へ成長するため、将来的な経営戦略を見据えた社名変更と企業ブランド構築が課題でした。社長の意向に基づき、ブランドコンセプト、ミッション・ビジョン・バリューを策定し、新社名ネーミング、VI開発、社是や行動方針の見直しを含む総合的なインナーブランディングを実施しました。これにより、将来的な経営ビジョンの実現に向けた新たな企業ブランドが確立されました。
>詳細はこちら|企業ブランディング成功事例(MOBILIX HOLDINGS株式会社)

事業会社の設立に伴うブランディング(Visionary Architects株式会社)

MOBILIX HOLDINGS様の新規事業会社設立に伴い、DX・生成AI活用サポート事業のブランドコンセプト明確化と、社名及びVI開発が課題でした。MOBILIX HOLDINGSのブランディング実績に基づき、新社名ネーミング、ロゴ・VI開発に加え、名刺やリモート会議用背景などの企業ツールデザイン・制作を支援しました。その結果、新規事業会社としてのスタートアップのブランディングと視覚的アイデンティティが確立されました。
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ジェイスリーは多くの企業様の企業ブランド構築・刷新をご支援しています。その他の企業ブランディング実績や企業ブランディングのやり方に関心のある経営者様・ご担当者様は気軽にお問い合わせください。貴社の状況に合わせて柔軟にブランディングをご提案差し上げます。
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ブランドコンサルタント/コピーライター 安藤 慶太

広告制作会社、ブランディングエージェンシーを経てジェイスリーに入社。コピーライター兼ブランドコンサルタントとして、さまざまなBtoB/BtoC企業の各種ブランディング実績を有する。マーケティングリサーチ、CI/VI開発、コンセプトメイク、商品開発、ブランディングに関連する各種クリエイティブのディレクションまで手掛け、一貫したブランディングを支援する。ブランド・マネージャー1級資格保有。

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