【J3メソッド】企業ブランディング/MI構築編 2

1986年、渋谷の一角でデザイン会社として創業して以来、私たちは「人が、ヒトと、ひとへできることを大切にしていこう」という企業理念のもと、クリエイティブのチカラで多くの企業や地域をご支援してきました。
現在は、ブランディングファームとして幅広いクライアントのさらなる価値向上のお役に立てればと、ブランドコンサルティングからクリエイティブ、マーケティング、グロースまでバリューチェーンを構築することで、ワンストップでサービスを提供しています。
そんな私たちが、実際にクライアントをご支援するときに行っているブランディングメソッドを、本シリーズを通してご紹介していきます。
1. ナレッジ紹介
前回の記事では、私たちがクライアントの「強み」や「らしさ」を抽出する際に実施するワークショップについてお伝えいたしました。今回は、ジェイスリーが企業ブランディングでMI(マインド・アイデンティティ)を構築する際に実施するアンケートについて、実施目的、ポイントなどをお伝えします。
アンケートの目的
弊社では、MI策定に向けたアンケートは、全社員を対象として実施します。その目的は、下記のとおりです。
1.「価値観の傾向」を把握する
経営層やプロジェクトを運営するメンバーだけでなく、他の社員が普段感じている「企業価値」や「意識」、「めざす未来」について回答していただくことで、どれだけの方々が共通意識を持っているのか、あるいはどのような考え方が対立しているのかなど、組織全体の傾向を掴むことを第一の目的としています。
2.「理念」の浸透度・共感度を把握する
どのような企業をめざすのか、あるいはどのような未来を叶えるのかなど、組織の指針となる「理念」がどれほど浸透しているのか、そしてどれほど共感されているのかを調査します。現状の理念の内容や発信方法・頻度などと、浸透度・共感度を比較し、MI策定時や発信時の参考にします。
3.「課題」や「相違」を発見する
全社員にアンケートを実施すると、実施前の予測とは違う結果が出たり、自由記述の回答から意外な価値観を提示されたりすることが度々あります。時には、経営層やプロジェクトメンバーがまだ気づいていない「課題」や、部署や世代間での考え方の「相違」を見つけることもできます。
4.「自分ごと」という気持ちを醸成する
アンケートで一人ひとりの意見を調査し、全社員を巻き込むことで、MI策定プロジェクトが「自分ごと」に感じられるようになります。ただし、調査して終わり、ではその効果は望めません。調査結果やプロジェクトの進捗を随時周知するなど、情報共有を実施することが大切です。
アンケート作成の注意点
アンケートでどのような設問を、どれだけ設置するかという「設問設計」によって、回答率や回答内容の質が変わってきます。なるべく有益な内容を、より多く回収するためには、下記がポイントとなります。
1. 選択式の設問を多めに設置する
自由記述での設問が多くなると、「時間がかかってしまう」「面倒くさい」という意識が先立ってしまい、回答しない、あるいは適当に回答する社員が増えてしまいます。そうならないためにも、設問は4択や5段階評価などにして、できるだけ回答しやすいかたちにします。
2. 多彩な意見を汲み取りたい項目は自由記述にする
選択式の回答では、全体の傾向を掴むことが可能です。一方で一人ひとりの想いや価値観などは見えづらいという点もあります。なるべく多彩な意見を汲み取りたいという項目に関しては、自由記述が適切です。その回答のしやすさのカギを握るのは、設問文。なるべくシンプルに、だれにでもわかりやすい文章にすることが大切です。
3. 設問は全部で10問程度に収める
設問が多くなると、回答のハードルが上がってしまうため、設問数は10門程度が目安となります。設問内容の検討時には、似たような設問を削除あるいはまとめる、回答が複雑になりそうな設問はインタビューで聞くことにするなどして、無駄なく漏れがない設問構成にすることが必要です。
アンケート実施方法
全社員がパソコンやスマートフォンを操作しやすい環境であれば、Google Formなどのオンラインフォームを利用しましょう。集計に手間がかからないうえ、サービスによってはグラフ化も簡単にできます。アンケート実施期間は2週間程度として、無回答の数を可能な限り減らせるように締め切り直前にリマインドを実施します。
2. 事例紹介
松田電気工業株式会社/理念再構築のご支援
松田電気工業は、電気・通信・空調・衛生設備などの総合設備工事を手掛ける会社です。創業70周年に向けた「中期経営計画策定コンサルティング」の一環として、私たちはその主軸となる経営理念の再構築を支援いたしました。プロジェクトメンバーは、経営層の方々で構成されていたため、理念(=MI)策定に向けて一般社員の意見や価値観を確認すべく、全社員アンケートを実施しました。
同プロジェクトでは、網羅的で複雑化していた既存の理念を再整理することを目的としていました。そのため、アンケートでは「理念の内容を把握しているか」「理念に共感できるか」「共感できる文言は、次のうちどれか」などの選択式の設問を設けました。そのほか、一人ひとりの価値観を確認すべく、「共感できる理由を教えてください」などの自由記述の設問も盛り込みました。
これらのアンケート結果から、社内の理解度、共感度、価値観を分析。その結果を踏まえつつ、プロジェクトメンバーと意見を出し合いながら理念体系の項目を構築していきました。
なお、プロジェクトの詳細は弊社の事例紹介ページでご紹介しています。こちらもご覧ください。
3. まとめ
企業活動の「旗印」となるMIを策定するためには、組織における現状の「価値観の傾向」や、理念の浸透度・理解度を把握できる全社員アンケートは欠かせません。一見すると誰にでも作成できるように思えるかもしれませんが、その結果を有益なものにするためには、調査内容に合わせた設問設計を適切に行うことが必要です。
今回ご紹介したアンケートをはじめ、弊社にはMI策定に向けた調査・リサーチのノウハウがございます。「MIの必要性は感じているけど、どこから手を付けたらいいかわからない」「うちの会社の場合、どこまで実施すべきかわからない」などといったお困りごとにも、しっかり対応いたします。ぜひお気軽にご相談ください。
2012年よりライターとしてのキャリアをスタート。音楽系フリーペーパーや地域情報サイト、週刊誌、ムック本などさまざまな媒体の制作に携わる。2015年には広告代理店に入社。教育機関のキャッチコピーやタグラインの開発、各種SPツール掲載用のインタビュー記事などを担当する。2023年にジェイスリーに入社。リサーチ力・ヒアリング力をいかし、ブランディング戦略を支援している。
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