人気ブランドから学ぶ、選ばれるブランドネーミング
この記事にたどり着いたあなたは、新しい会社や製品・サービスなどの「ブランド名」はどうやって付けたらいいの?と頭を悩ませているのではないでしょうか。ネーミングの大切さやネーミングを考える手順については、以前の記事「ネーミングは、ブランディングの『はじめの一歩』」でご紹介しています。今回は、お客さまに選ばれるネーミングとその特徴を、世の中にある実際のブランドをもとにお話しします。
ブランドの特徴をわかりやすく表現
お客さまに選ばれるブランドのネーミングタイプの1つ目は、『ブランドの特徴をわかりやすく表現しているもの』です。なぜでしょうか?
それは、ネーミングがブランドを体験するときの入り口だからです(ネーミングの他にも入り口は存在しますが)。お客さまはネーミングでブランドの一端に触れ、興味を持ち、もう一歩踏み込んでブランドを体験してくれます。
もし、ネーミングがブランドの本質と真逆のことを表現していたとしたら、どうでしょう。ブランドを体験したお客さまは「ネーミングに騙された!」と感じ、ネガティブなブランド体験を記憶することになります。これは、ポジティブな体験記憶を積み重ねることで成長を遂げる「ブランド」にとって、極めて大きな痛手です。このような裏切りを行わないためにも、ネーミングはブランドの本質に基づいた特徴をわかりやすく表現している必要があります。
その代表格のネーミングが「無印良品」です。
ご存知の通り、「無印良品」は衣服や生活雑貨から住宅までも取り扱う日本有数のブランド。そのコンセプトは「ものの生産プロセスを徹底して合理化することで簡潔で気持ちのいい低価格商品を生み出すこと」です。「無印良品」というブランド名は、このコンセプトの意味を簡潔に表す4つの漢字で合理的に表現されています。まさにこのブランドの特徴を適切に体現しているネーミングなのです。
ターゲットの気分を表現している
お客さまに選ばれるネーミングタイプの2つ目は、『ターゲットの気分を表現しているもの』です。人が行動の意思決定をするときには「共感」が重要な鍵となります。
ものを買うという状況において、まったく知らない人からよりは、自分がよく理解している人や自分のことをよく理解してくれている人から買いたいと思う人が多いのではないでしょうか。それゆえ、「自分をよく理解してくれている」と思わせる状況をつくるために、お客さまや見込み客を分析して、あなたの会社あるいは製品・サービスを選んでいるとき・使用したときの気分をネーミングに表現することが有効なのです。
2021年に社会現象とも呼べるヒット曲になり、ユーキャン新語・流行語大賞にTOP10入りしたAdo氏の「うっせぇわ」が、ターゲットの気分を表現した好例でしょう。
冒頭の「ちっちゃな頃から優等生 気づいたら大人になっていた ナイフの様な思考回路 持ち合わせる訳もなく」(作詞作曲:syudou, 2020年リリース「うっせぇわ」から引用)という歌詞を初めて聴いたとき、筆者はこの曲を聴いたことがある違和感を覚えました。
そして、すぐに「ちっちゃな頃から悪ガキで 15で不良と呼ばれたよ ナイフみたいにとがっては 触るものみな傷つけた」(作詞作曲:康珍化/芹澤廣明,1983年リリース「ギザギザハートの子守唄」から引用)という対照的な人物像を歌った80年代のヒット曲を思い出したのです(筆者の年齢がバレますね)。
この曲の対比によって、昭和の不良のように粗暴に振る舞うことが許されない現代で、優等生の皮をかぶって育つよりなかった若者の苦しみが、よりリアルに伝わった気がしました。
そして、「うっせぇわ」の歌詞にはこうあります。「最新の流行は当然の把握 経済の動向も通勤時チェック 純情な精神で入社しワーク 社会人じゃ当然のルールです」(作詞作曲:syudou, 2020年リリース「うっせぇわ」から引用)。
外界との調和を守るために、窮屈そうにしながらも社会人生活に溶け込もうとする情景です。しかし、無理を重ねてきた若者の蓄積された怒りが、社会の規則を一方的に押し付けられたことをきっかけに爆発し、「うっせぇ うっせぇ うっせぇわ」と激しく、強く、そして軽快に社会を切り捨てます。
この怒りの発露とそれにともなう爽快感が、同じような状況で生きてきた多くの若者の共感を集めたのでしょう。その感情が凝縮された一言、「うっせぇわ」という曲名は共感を集めるのが当然であり、社会的な流行語へとつながっていったのです。
興味をひくインパクトがある
ネーミングタイプの3つ目は、『興味をひくインパクトがあること』です。総務省統計局の平成26年経済センサス-基礎調査によれば、日本には409万社という膨大な数の会社があります。
製品やサービスはそれを上回る数が存在することになり、そのすべてに何らかの名前が付いています。その、何百万、何千万というネーミングの海の中でユーザーの目にとまり、正しく記憶してもらうのは至難の業。そのためには、強烈なインパクトが必要になってきます。
ただ、インパクトが強ければいいという訳ではありません。ネーミングタイプ1つ目の「ブランドの特徴をわかりやすく表現する」のと同じように、会社や製品・サービスにまつわる情報をもとに、印象的な言葉や表現を探し出して、ネーミングに仕立て上げていくことが大切になります。
柔らかさと弾力のある食感を併せ持ち、甘さと香ばしさを楽しめる食パンと、超個性的な店名で話題を集めた高級食パン専門店「考えた人すごいわ」が、このタイプのネーミングに当てはまります。
この店と同じくベーカリープロデューサー岸本拓也氏が手掛けたお店は、強烈なネーミングが特徴です。「キスの約束しませんか」「すでに富士山超えてます」「夜にパオーン」など、パン屋とは思えないほど刺激的で、印象に残るものばかりです。
しかし、いずれのネーミングもそのお店やお店で扱っている製品のクオリティの高さ、そして来店者を楽しい気持ちにさせてくれそうなポジティブな雰囲気をうかがい知ることができます。
これは、岸本氏がそのお店や製品のことだけでなく、実際に現地まで足を運び、その町やそこに住む人たちのことまで想いを巡らせたうえで開発するからこそできるネーミングなのでしょう。
世の中で実際に活躍するネーミングを例に、お客さまに選ばれるブランドネーミングの特徴を3つご紹介しました。しかし、世界で活躍しているネーミングとその特徴は、この限りではありません。お客さまに選ばれているブランドネーミングとその特徴は、今後もご紹介してまいりますのでご期待ください。
また、“ものごとの本質を見極め、可視化して「価値」を伝える”ジェイスリーでは、上述の3タイプはもちろん、あらゆるネーミングの開発・提案が可能です。お客さまの価値を最大化するためにリサーチ&コンサルティングからクリエイティブ開発、マーケティング&グロースまで、トータルなブランディングを支援しております。お客さまの状況にあわせて柔軟にご提案しますので、ブランディングでお困りの際は、お気軽にご相談ください。
広告制作会社、ブランディングエージェンシーを経てジェイスリーに入社。コピーライター兼ブランドコンサルタントとして、さまざまなBtoB/BtoC企業やその製品/サービスのブランディング実績を有する。マーケティングリサーチ、コンセプトメイク、ネーミングやスローガンなどのバーバル開発、商品開発、PRツール制作のほか、ブランドマニュアル、CI/VI開発、パッケージデザイン、ブランドムービー制作、ブランドサイト構築等のクリエイティブディレクションまで手掛け、一貫したブランディングを支援する。
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