ロゴレス家電の潮流から考えるCI/VI構築の意義と重要性【前編】

ロゴが邪魔だ…なんて嘘でしょ!?

先日、日経電子版を読んでいてある記事が目に留まりました。その記事で私が気になったポイントを以下にまとめてみました。

▼「ロゴレス家電」なぜ増える 社名の主張、部屋で邪魔に (※有料記事)

 

・アイリスオーヤマ、シャープ、日立製作所など、大手ほどブランド力がない新興メーカーも、あえてロゴを打ち出さない戦略に出ている。

・かつてステータスや信頼性の象徴だったロゴの意義は希薄に。

・若い世代を中心に「見た目、デザイン」が重視されていて、ロゴがノイズと捉えられている傾向にある。

・かつては、大手メーカーのロゴマークは安心材料であったが、最近は技術レベルが上がってきていて、どのメーカーを選んでも失敗しにくくなっている。

・その他、環境への配慮やデザイン重視の製品開発、在宅ワークなど消費者のライフスタイルの変化など、さまざまな要因がある。

そういえば私自身も、いま自分の家にある家電がそれぞれどこのメーカーのものなのか?すぐには答えることができません(覚えていません)。どこのメーカーのものなのか?が購入理由になっていないんだな、とあらためて自分の購買行動パターンを目の当たりにしたのと同時に、企業のブランディング支援をさせていただいている身としては、この衝撃的な言葉がたくさん詰まった見出しに動揺してしまいました。

ですが、記事をよく読み落ち着いて考えてみると、この記事は「ロゴは邪魔だ!だから必要ない!」と言っているのではなく「ロゴだけが購買動機になる時代ではなくなってきてますよ」ということだと理解し、少し心が落ち着きました。しかし、時代がそうなんだったら仕方ないと片付けるのはまだ早い、ということで企業を象徴するロゴについて、今一度本来の役割や意義のところまで立ち戻って整理してみようと、思い至りました。

ちなみに余談ですが、私がステンレスボトルを買う時はタイガー魔法瓶一択。日本製である安心感や機能性はさておき(もちろん太鼓判押しですが)あしらわれている虎のロゴが大好きだからです。象より虎。以上、余談でした。

 

企業ロゴの背景にはそれぞれのストーリーがある

私たちジェイスリーが提供しているブランディング支援サービスのプロセスの中に「CI/VI構築」というのがあります。これは、戦略フェーズで洗い出した企業の理念や目指す姿などを体系立てて設計し、実装フェーズにて視覚的に整えていくというもので、最終的なアウトプットのひとつに「ロゴ」があります。

そもそも、CIVIは、企業が自社の存在意義や提供価値を社会に伝えるための手法のことで、企業ブランディングの中でも重要な要素のひとつです。この伝えるための手法の中で「ロゴ」というツールが使われる、といった方がわかりやすいかもしれません。「CIってロゴをつくることなんですよね」と思われがちですが、ものすごく厳密にいえばそれは間違いということになります。

CIとは「コーポレート・アイデンティティ(Corporate Identity)」の略、ミッション・ビジョン・バリューや企業メッセージなどを含めた、イメージづくりの一貫した戦略や計画のこと。
VIとは「ヴィジュアル・アイデンティティ(Visual Identity)」の略、CIに基づいた考え方をロゴやシンボルマークなどで視覚的に表現すること。
※VIと並んでMI(マインド・アイデンティティ=理念を示すこと)BI(ビヘイビア・アイデンティティ=理念を行動に移すこと)という要素もあります。

つまり、このCI/VI構築のプロセスを経て視覚化されたものがロゴであり、ロゴはその企業を象徴する「顔」として機能します。逆に言えば、この「顔」として機能しているロゴには、その背景に理念やストーリーが必ずあり、どう見られたいかの綿密な戦略と計画があるということ。

ですので、先ほどの記事にあったような邪魔だと思われてしまうロゴにもこれらの背景は必ずあり、顧客はそのロゴを通して理念やストーリーを無意識に見てきたからこそ、企業と顧客は信頼関係を築き、企業は根強いファンを獲得し続けているという経緯があるのです。

以上のことから、今回のロゴレス家電の潮流において、ロゴをあえて表に打ち出さない戦略を取っているメーカー企業からは「ロゴがなくても選んでもらえるブランドを目指すのだ!」という強い意志を感じることができ、ロゴを通して築き上げた顧客との信頼関係があるからこそできる技なんだろうと気付かされました。
そしてこれからの時代は、こういったロゴ以外の要素(プロダクトデザイン、佇まい、顧客への共感など)をもブランドの要素に引き上げていこうとする企業こそが、新しい時代を勝ち抜いていくんだろうと思います。

BtoB市場も今こそブランディングと向き合う時

センセーショナルな見出しにショックを受けた心が整ったうえに、むしろロゴレス家電を販売するメーカー企業を応援したくなってきました。皆さんはいかがでしょうか?

さて、ここまで読んでくださった方の中には「うちはBtoB企業だからブランドとかロゴとか関係ない」とか思っている方も多いと思います。ですが、近年はBtoB市場でのブランディングニーズが確実に高まってきています、悩みのきっかけはさまざまですが、実際に私たちジェイスリーにもご相談いただくことが本当に増えました。

ブランド構築には時間がそれなりにかかること、そしてまだまだ取り組んでいる企業が少ないことを考えると今が始めどき。ということで、次回はBtoB企業にとっての「ロゴ」とは?についてお話しさせていただきます。
次回まで待てない、今すぐ話を聞きたいという方はぜひお気軽にご相談ください。

取締役 中川 桜

1998年よりカタログやSPツール制作中心の制作会社にてデザイナーとしてのキャリアをスタート、2000年にジェイスリー入社後本格的にエディトリアルデザインの業務にどっぷり浸かり、多数の月刊誌、旅行系雑誌やムックのアートディレクターを歴任。現在の活動は、WEBメディアの企画や制作ディレクション、インナーブランディングのコンサルなど、クライアントの課題解決のための改善提案立案およびコンサルテーション業務まで多岐にわたる。座右の銘は「自分の感受性くらい、自分で守ればかものよ」

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